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【校長室より】新年度がスタートしました!(2024.4.19)

 村田高校の令和6年度が、いよいよスタートしました。年度始めは学校生活に慣れないことも多いでしょうし、気温の寒暖差も大きいこともありますので、どうぞ皆さん、体調を崩さないようご留意ください。

 入学式の式辞を紹介します。「自分と他者とが互いに理解し合う努力を続け、共に生きていこうと挑戦を続けること。」は、校訓の「協和」にもつながるものと考えています。村高が皆さんにとって、あたたかく、過ごしやすい場所になることを心から願っています。

 

令和六年度 入学式 式辞

 村田の地を吹き抜ける風にも柔らかさを感じる時節となりました。そよ風は里山の桜の木々に美しい花を届け、残雪をまとう蔵王連峰の稜線へとゆるやかに季節を運び上げています。

 本日この春の良き日に、村田町 町長 大沼 克巳 様をはじめとする多数のご来賓、保護者・御家族の皆様に御臨席を賜り、令和六年度入学式を挙行できますことに心より御礼申し上げます。

 ただいま入学を許可いたしました六十四名の新入生の皆さん、創立100年を祝う節目の年に、歴史ある本校への入学おめでとうございます。皆さんは、今日から新たな学校生活の一歩を踏み出しました。門出を心からお祝いします。

 さて、皆さんは、今日から始まる高校生活で、新しい友人、先輩、そして本校教職員とのかけがえのない出会いや、授業や学校行事、部活動等を通して新しい体験を重ねていくことになります。

 多感な青春時代のそうした出会いや体験は、やがて皆さんの長い人生に、深く大きな影響を与えていくことでしょう。かけがえのない3年間を送るためにも、義務教育を終え、高校生活を始める皆さんには、新たな気持ちで自分なりの目標を掲げ、そこに向かって挑戦して欲しいと願っています。

 新たな挑戦の歩みを始める新入生の皆さんにエールを送るべく、2007年の東京大学入学式の式辞をなぞらえ、「一番大切な挑戦」についてお話しします。

 日本の最高学府で新入生に届けられたメッセージでは「困難に直面してもあきらめず挑戦し続けること」の大切さが説かれ、更には、最も重要な挑戦は、「自分と他者とが互いに理解し合う努力を続け、共に生きていこうとすること。」であると結ばれました。

 式辞を述べられたのは、東京大学の当時准教授(現在は教授)の全盲ろう者、福島智先生です。福島さんは、病気により小学三年生の時に視力を失い、高校二年生の時に耳も聞こえなくなりました。目が見えず、耳も聞こえなくなった当時、福島さんは真っ暗な宇宙空間に連れて行かれたような感覚に襲われたそうです。

 新入生の皆さん、福島さんの気持ちを想像してみましょう。皆さん、そっと目を閉じてみてください。(間を空けて)では、10秒後に声をかけますので、それまで両手で耳をふさいでみてください。(10秒後)ありがとうございます。目を開けて、話を聞いてください。

 福島さんの気持ちが想像できたでしょうか。何も見えず、何も聞こえない、いつまでも続く静かな夜の世界。それは言葉で表現できないような孤独と絶望の世界に身を置いた状況です。こうした生い立ちに屈することなく、福島さんは、「指点字」という会話方法を用いて、コミュニケーションを図りながら研究を続けることで、障害者が暮らしやすい社会づくりへの挑戦を続けています。

 私は、障害者、健常者の区別なく、人間同士が互いを理解することは、大変難しい事だと思っています。そして、人種や宗教、国境を越えて互いを理解しようとする営みこそが人類最大の挑戦であると考えます。ロシアによるウクライナ侵攻や、イスラエルとパレスチナ自治区の領土問題をはじめ、世界各地で紛争や軍事衝突が絶えない世界情勢を見たとき、利害を超えて、まずは双方がお互いの状況や主張について理解を図るべく挑戦を続けていくことこそが、地球の存続に必要不可欠であると考えます。この一見壮大な構想の礎となるのは、今を生きる私たち一人一人が、ますは手の届くところから互いを理解し、共生していくことなのだろうと思います。

 その手始めとして、皆さんは今、福島さんの気持ちを理解しようと想像の力を働かせました。他者の気持ちに寄り添い、相手を理解しようと努力した皆さんの行為が、まさに「最も重要な挑戦」なのです。高校生になったことを機に、是非「相手の気持ちを思いやる挑戦」を、家族、同級生、先輩、先生方など、自分を取り巻く多くの人たちに対して、続けて欲しいと願っています。

 保護者の皆様、本日は誠におめでとうございます。大切なお子様の成長を促すべく、学校は教職員一同、保護者の皆様との連絡・協力体制のもとで、教育活動に臨んで参ります。ご家庭と学校がそれぞれの役割を認識し、共に足並みをそろえて協力・連携していくことが何より大切であると考えておりますので、どうぞ本校の教育活動に対する、御理解・御協力のほど、よろしくお願いいたします。 

 結びに 本日 ご多用の中 ご臨席を賜りましたご来賓の皆様 誠にありがとうございました。今後とも入学生をはじめ村田高校に対するお力添えのほどよろしくお願い申し上げます。そして 入学生が、新たなる挑戦と大いなる活躍に向けての歩みを始めることを期待して式辞といたします。

 

  令和6年4月8日

       宮城県村田高等学校長 安斎 善和